「汗をかいた人が報われる組織でありたい」【株式会社リッジワークス】
- 2025-06-30
- michimichi編集部

札幌を拠点にソフトウェア・ハードウェア開発を手がけ、「現場の困りごとをIT技術で解決する」をミッションに掲げるIT企業。「汗をかいた人が報われる組織」を目指す長野社長に、創業の舞台裏からユニークな組織文化、そして未来の構想について聞いた。


異色の経歴からIT業界の社長へ ―― 現場で本当に役立つものを作っていくことが我々の使命 ――
Q.創業のきっかけは?
実は、弁護士になりたかったんですよ。
司法試験に何度も挑戦しましたが全然受からなくて。
生活費を稼がなければならないこともあって、学習塾の講師の仕事を始めたんです。
愛知県の岡崎で教えていました。
講師の仕事を続けながら司法試験も受けていたけれどやはり全然ダメで…これはもう自分の中でケリをつけようと思ってこの世界に。
当時、塾にあるパソコンで問題集を作ったりマクロでちょっとした自動化なんかも始めたりして。
これがITとの関わりの始まりですね。
この経験を活かしてIT業界へ転職しました。
当時のIT業界は敷居が低かったのもあって…あっさり業界に入れました(笑)
システム開発を中心に携わっていましたが、システムだけでは世の中を救うことは難しいことを実感しました。
パソコンの画面の中だけで現場の苦労は救えないんですよ。
本当に困っていることは、意外と日常の原始的な所作の中に隠れていたりすると思っていて。
そこにITを当てはめて「ちゃんと役立つもの」を作りたいと思った。
でも、自分一人の力ではどうしようもないので、仲間とともに協力し合って実現したいと思い独立を決意したわけです。
Q.現場の苦労を助けるITとは具体的にどういうことでしょうか?
うちの仕事はざっくり言うと現場の困りごとをIT技術で解決すること。
ソフトウェア開発がメインですが、ハードウェアもやっています。
どちらか一つだけではダメなんですよ。
システムとハード両方を作ることで、ようやく現場にフィットするものになる。
例えば、特定の音だけを聞き分けて反応する機械。
AIではなく音の周波数やリズムの「論理」で判断させているんです。
学習コストがかからないから安い。
他には、薬の飲み忘れを防ぐシステムもあります。
家族が遠方に住んでいても高齢の親が薬をちゃんと飲んだか確認できるようにしたかったんです。
福祉施設の配薬ミス防止のアイデアもありますね。職員の渡し間違いを防ぐためにRFID技術(電波を利用して、タグに埋め込まれたICチップの情報を非接触で読み取ることで、物や人の識別や追跡を可能にするシステム)などを活用できないか模索中です。

お金も仕事も、誰かがくれるものじゃない
Q.貴社の組織文化や社員の成長を促す取り組みについて教えてください。
当社は「汗をかいた人が報われる組織」を目指しています。
仕事をすればもちろん汗をかくけれど、それ以外のところの汗です(笑)
例えば、自宅で今日の振り返りや新しい技術の勉強をしてみるとか、休日に勉強会に参加してみるとか「見えない努力」ですね。
学んだことを社内にフィードバックしてくれたら、ちゃんと労働時間として認めることもあります。
他には、部門別の採算制度というものを導入していて「お金も仕事も、誰かがくれるものじゃないよ」というスタンスを徹底してるんです。
事業計画も、全社員に見せています。銀行に提出するガチのやつです(笑)
どういう計画で会社が動いていてどこに向かっているのか?これを知ってもらわないと良い仕事なんてできないですから。
評価は年1回。
売上だけではなく、「会社のためになる動き」を見るようにしています。
一言でいうと、「普通でいたい人にはちょっとキツいかもしれない会社」かもしれないですね(笑)
でも、課題を一つずつクリアしていけば、ちゃんと成長できる。
成長したい人には、これ以上ない環境かもしれないですね。
Q.社員全員に事業計画書を展開することは珍しいことだと思いますが、良い効果はありましたか?
ちょうど昨年入社した新入社員が、「目標が見えないのは辛い」と言っていて。
まずは目の前の仕事を学んでもらうことが最優先だと思っていますが、そのような中でも意識を持ってくれる社員がいるんだと思うと嬉しくなりました。
物事には、必ず意義とか目的、ゴールがあるんですよね。
それをしっかり伝えないと、どう動いたらいいか、分かりにくいですよね。
だから、会社としてどういう目的があって、この仕事にはあなたにとって、そして会社にとって、どのような目的とゴールがあるのか、各チームのリーダーたちには配下の社員にしっかり伝えるようにしています。
技術よりも一緒に作りたいかどうか
Q.どういう人と一緒に働きたいですか?
「まずはやってみる人」これに尽きますね。
慎重に準備してから動くのではなく、まず一歩を踏み出せる人。
やってみた後で「あ、違っていたかも」と思ったら、そこから修正すれば良い。
最初から完璧を目指さなくて良いんです。
それから、技術は入ってから学べば良いと思っています。
大事なことは「一緒に作っていける人かどうか」「言われたことをやるのではなく一緒に考えて動いてくれるかどうか」だと思っています。
あとは、誰かが困っているときに「なんとなく元気がないな」「大丈夫かな」と察知できる人。
これはスキルではなく「人間力」ですね。
そういう人が結局のところチームを支えてくれるんですよ。
Q.貴社の選考プロセスが非常にユニークだとお聞きしました。
一次面接は僕が実施しますが、最終面接は社員がやるんですよ。というのも、僕が「人を見る目」がないと思っていて(笑) むしろ、これから一緒に働く現場の人たちのほうが、誰と相性が良いのかちゃんと見抜けると思っています。
Q.採用活動だけでなく、評価制度も一風変わっているそうですね。
年に一度「上司へのファン投票制度」があります。
部下たちがこの人とまた一緒に仕事がしたい!という上司に投票するんです。
得票数が多い上司には報酬が出ますよ。
役職も上がるかも…しれないですね。
こういった制度があるから、上司も部下からの信頼を取りにいくようになるんですよ。
「俺についてこい!」ではなくて、「あなたの味方だよ」という姿勢が出てくる。
それが組織全体の風通しの良さにも繋がってくるんです。


蓄積してきたノウハウをアジアへ
Q.今後の展望について教えてください。
大きく言うと世界、まずはアジアですね。
日本が抱えている少子高齢化の問題は、10年後、15年後にアジア諸国にも来ると思っているんです。
そのときに、今当社が日本で取り組んでいるノウハウや製品が絶対に役立つ。
ただ、やみくもに海外へ進出するわけではありません。
現地でブランチオフィスを構えて、その土地の人たちと一緒に作っていきたい。
「日本からの押し売り」ではなく、現地の感覚と繋がったものを作るには、現地の人と育てていかないとダメだと思っています。

技術者の「第二の人生」もデザインしたい
Q.長野社長ご自身が温めている未来の構想があるとお聞きしました…!
実は、福祉施設を作りたいと思ってるんですよ。
当社で開発した機械やシステムを使って、少人数でもちゃんと機能するモデル施設。
今いる技術者たちが年をとったとき「引退」するのではなく「社会とつながれる場所」を作りたいんです。
その施設では、高齢者が子どもたちと関われるようにもしたい。
僕らの技術は結局「人」を助けるためのものだから、そういう場があったらいいなと。