企業の「保健室」が働き方を変える~産業保健師が拓く、新たな健康経営のカタチ
- 2026-01-23
- michimichi編集部


職場では、従業員の身体的な健康だけでなく、メンタルヘルスのケアも重要な課題となっている。しかし、多くの企業、特に道内の中小企業にとっては、社内に専門の医療スタッフを常駐させることはハードルが高いのではないだろうか。
こうした課題に対し、外部の看護師・保健師が企業をサポートする産業保健師サービスを展開しているのがスタートアップの株式会社ホスキュア(札幌市白石区)。ハラスメントやメンタル不調の相談窓口の分断、専門人材の不足といった企業の表面化しにくい悩みに対し、解決の糸口を見出すサポートが注目を集めつつある。
そして、同社はサービス拡充を通じて、看護師の新たなキャリア形成の可能性も示唆している点がユニークだ。代表取締役の丸山維乃さんに、起業の思いやビジネスモデルについて尋ねた。
分断される相談窓口と「企業の保健室」という解決策
丸山さんが経営する同社の事業は大きく3つ。
- 企業の保健室…保健師が月1〜2回訪問し、健康相談を担う。
- 医療職の人材紹介や就業支援
- 保険外看護サービス
中でも注力しているのが「企業の保健室」だという。
企業では、ハラスメントとメンタルヘルスの相談窓口が別々に設置されていることも多いが、不調を抱える従業員にとって、その原因を自ら切り分けるのは難しい。勇気を出して訪れた窓口で「専門外です」と断られれば、支援への道は閉ざされてしまうおそれもある。
こうした課題に対し、ホスキュアのサービスでは企業が同社と顧問契約を結び、月に1〜2回、担当の保健師が企業を訪れる。従業員は身体の不調からメンタルヘルスの悩みまで、気軽に相談できる。
企業にとっては、常駐スタッフを抱えるコストを抑えつつ、従業員の健康を守る体制を構築できるメリットがある。そして従業員にとっても、不調の初期段階で専門家のアドバイスを受けられる「スクリーニング」の役割を果たし、問題の深刻化を防ぐ効果が期待される。
外部の保健師ならではの多角的な視点が活きる

「メンタル不調の原因をたどると、ハラスメントが隠れているケースは非常に多いです」
何らかの不調の原因は千差万別。多角的な視点が必要になることもある。
「会社への相談の入り口はメンタルじゃなかったとしても、話していくと本当の原因はメンタルだったり(するケースがある)。ほかには、会社には体調不良の理由を体質的なものとして伝えていたけれど、面談してみると実は長時間の残業があった…みたいなケースもありました」
面談を通じて明らかになった本当の理由に対して、「それなら労務管理をきちんと整えて良い状態へ修正しましょう」などの助言をして、クライアント企業の健康経営を支えていく。
看護職の新たなキャリアパスとして
「企業の保健室」という働き方は、看護師・保健師資格を持つ人々にとって、新たなキャリアパスを拓く可能性を秘めている。
丸山さん自身、大学卒業後、看護師として急性期病院で勤務。コロナ禍の最前線での経験を経て、「予防の段階で何かできることがあるはず」という思いから、看護師の資格を活かして新たな道を切り拓いてきた。

看護師として働いていたときから、病院の収入は制度上、診療報酬によって決まる構造を踏まえた上で、看護師の給与を上げるための財源には現実的な限りがあることも十分理解していた。
それ故に「頑張った分が、頑張った人が評価されるのであれば、法人として事業を行うという(別の)道もあるかな」と考えたのだという。
産業保健のハブ的な存在になりたい
「職場に直接言えない悩みを抱えている人も多いし、職場としてもそれを把握できない、把握したくてもできなかった結果、人材が流出してしまって(採用に)コストをかけている状況があります。だからこそ『産業保健』というハブ的な存在が必要だと思っています」

丸山さんの願いは、すべて企業とそこで働く従業員が健康であり続けられるために、専門職が関わることが当たり前になっている社会だ。
「絶対にそうなった方がいいと思っています。あとは『産業保健といえばホスキュアだよね』にしていきたいですね」



